貨車の絵 その5



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チキ5000形(初代)/コキ5000形 コンテナ車

チキ5000形(初代)/コキ5000形 コンテナ車 公式側チキ5000形(初代)/コキ5000形 コンテナ車 非公式側

国鉄のコンテナ輸送は、トラ30000形無蓋車と3000形3tコンテナーでの試行を経て、昭和34年(1959年)11月からチキ5000形コンテナ車と5000形コンテナの組み合わせで 最高速度85km/hの特急「たから号」として開始されました。
当時の花形貨物列車といえば75km/hの急行便や鮮魚輸送列車でしたが、このうち急行便を順次置き換えてゆく計画です。

たから号は 汐留〜梅田 直行往復運用なので固定編成とされ、手ブレーキ操作用のデッキを省略し、突放禁止車両となっています。(突放とは、機関車で貨車を連結器半開きの不連結状態で押していき、勢いが付いたら機関車だけ停車して貨車を突き放して転がす入換作業のこと。)
チキ5000形は チキとは言ってもコンテナ輸送専用で、車体は魚腹形側枠の台枠構造として、留置ブレーキハンドルが台枠側面に付いています(試作車は端面。)。
また、世間にアピールするため 全体を赤3号で塗装しています。たから号ではさらに、コンテナと同じ色に塗られたヨ5000形車掌車も専用に用意されました。

昭和40年(1965年)に新たに「コンテナ車」という貨車の種別が生まれ、コキ5000形に称号改正されました。

チキ5000形は 試作も含めて57両製作されましたが、のちにコンテナ輸送が全国に拡大し コキ5500形が増備され 列車本数も増えると、固定編成の意義は薄れ、効率的に運用するために全車がコキ5500形に改造されています。
改造は昭和41年(1966年)から行われ、全長が17800mmから18150mmに延長されました。コキ5000形を名乗っていた期間は 極わずかです。

※コンテナ輸送についての解説は積荷の絵その1積荷の絵その2も参照して下さい。
※チキ5000形二代目についての解説は貨車の絵 その4を参照して下さい。

コキ5500形 コンテナ車

チキ5500形 コンテナ車 初期車+旧一種コンテナ コキ5500形 コンテナ車 初期車+12ftコンテナ コキ5500形 コンテナ車 初期車(JR)

コキ5500形 コンテナ車 中期車 短台枠+旧一種コンテナ コキ5500形 コンテナ車 中期車 短台枠+12ftコンテナ コキ5500形 コンテナ車 中期車 短台枠(JR)

コキ5500形 コンテナ車 コキ5000形改造+旧一種コンテナ コキ5500形 コンテナ車 コキ5000形改造+12ftコンテナ コキ5500形 コンテナ車 コキ5000形改造(JR)

コキ5500形 7000番代 コンテナ車 新形台枠+旧一種コンテナ コキ5500形 7000番代 コンテナ車 新形台枠+12ftコンテナ コキ5500形 7000番代 コンテナ車 新形台枠(JR)

コキ5500形 コンテナ車 新台車+旧一種コンテナ コキ5500形 コンテナ車 新台車+12ftコンテナ コキ5500形 コンテナ車 新台車(JR)

コキ5500形はコンテナ輸送を全国に拡大するため、チキ5000形の車体にデッキを追加して 一般貨車と同じように手ブレーキを扱えるように設計された形式で、 チキ5000形製作の翌年、昭和35年(1960年)から昭和45年(1970年)にかけ、3089両(8900番代を含む)が製作されました。昭和40年(1965年)まではチキ5500形を名乗っています。また、のちにコキ5000形の改造車57両も追加されています。

量産の中で順次設計変更され、専門家が見ると 大きく分けて13種類に類別する事が出来るそうです。
簡単に解説すると全長は初期の車が18150mm、後期の車が18300mm。車体台枠の補強リブは初期の車が多くて、後期の車が少ないです。
ブレーキ装置や台車も 順次改良されています。

昭和46年(1971年)にコキ50000形と共に 従来より少し大きい12ft5tコンテナが標準化されると、旧一種5tコンテナ5個積から12ft5tコンテナ4個積に改造されました。
改造は昭和47年(1972年)から昭和51年(1976年)にかけて行われ、車号が現番号に20000プラスされています。
また 従来コキ車は、長物車の少し小さい車号表記方によっていたのですが、読みにくかったので、この頃から一般のサイズに改められています。

コキ5500形は性能も悪くなく コンテナ輸送の主力として大活躍したのですが、昭和50年代には多量の余剰車がでたため、ロングレール輸送用のチキ5500形(二代)に123両、検重車ケ10形に6両、汎用長物車のチキ6000形に422両が改造されています。

コキ5500形は活躍期間が長く、国鉄・JRのコンテナ輸送の歴史そのものなので5000形から19D形式あたりまでの どんな5tコンテナを載せても、さま になります。

コキ5500形 8900番代 コンテナ車

コキ5500形 8900番代 コンテナ車

コキ5500形 8900番代は 20ft10tコンテナを積載するフレートライナーの中でも 85km/hの山陽ライナーの運転に供するために昭和45年(1970年)に40両が製作されました。
車体はコキ5500形の後期の車とまったく同じで、緊締装置のみ20ftコンテナ2個、旧一種5tコンテナ1個を積むようになっています。
コキ50000形の増備が進むと他のコキ5500形と同じく 12ft5tコンテナ4個積に改造されました。

チキ5500形(2代) 長物車

チキ5500形 長物車 チキチキチキ 50mレール積

昭和46年(1971年)からのコキ50000形の量産が始まると、コキ5500形は輸送効率で見劣りしだしましたが、ちょうどその頃、東北・上越新幹線建設用に50mレールの輸送需要が生まれたため、コキ5500形の初期車を長物車に改造する事にしました。
従来、50mレールを輸送するには汎用長物車が4両必要でしたが、コキ5500形は18m級であり、これなら3両で済ませられるので もってこいです。
元々フラットカーなので改造も最小限で済み、また、九州から関東・東北まで けっこう長距離を走るので 最高速度85km/hも魅力だったと思われます。

こうして昭和49年(1974年)から改造されたのが チキ5500形2代目です。
床板を張って、手ブレーキを撤去して両側ブレーキ化したのが主な改造点です。
当初は50mレール輸送用でしたが、昭和50年代になると貨物の国鉄離れでコキ5500形にも余剰が発生したので、ロングレール輸送用も作られるようになり、使いやすかったのか平成6年(1994年)までに136両が誕生しました。
地方によって、茶色いのと黒いのがあります。
種車のコキ5500形が廃車された今でも現役で、コキ5500系列は結局 初期車の方が長生きしてしまった事になります。
なお、平成4年(1992年)に私有貨車のチキ5500形が製作されていますが、こちらはコキ100系タイプの新製車です。

コキ60000形 コンテナ車

コキ60000形 コンテナ車

コキ60000形は国鉄末期に95km/h列車の増発を行うために余剰のコキ5500形を大改造したもので、昭和60年(1985年)に127両が誕生しました。
改造は、車体をコキ50000形と同じ長さに延長し ブレーキ装置を新製したものです。
また、初期の改造車は 将来の100km/h運転の試作車の役割も持たせ、のちのコキ50000形250000番代と同じブレーキシステムを搭載しています。

改造では5t緊締装置を5個取り付けたのみで 20ftコンテナの積載はできませんが、当時、20ftコンテナ輸送はそれほど需要が無く まだまだ発展途上であったので 問題ありません。
コキ60000の外見は 少し きゃしゃに見えますが、元々コキ5500形は5tコンテナ5個積で作られているので、強度的には大丈夫なのでしょう。
オーバーハングが長いので、急曲線は少し心配ですが・・・。

コキ60000は本格的に改造した分、コキ5500形45500番代よりも長生きでした。

コキ5500形 45500番代 コンテナ車

コキ5500形 45500番代 コンテナ車

コキ5500形 45500番代は、コキ60000形よりもさらに簡易的に 95km/h運転対応にするために改造された形式で、種車は 性能の良いTR216A台車を履いたコキ5500形の後期の車です。
改造はJR化後の昭和63年(1988年)からで、ブレーキ装置のみ改良し、車体に識別のため青15号の帯を引いています。
ところで45500番代は、部品でも供出されたのか なぜか普通のコキ5500形よりも淘汰が早く、もったいない限りです。

チラ1形(二代目)/コラ1形 コンテナ車

チラ1形 コンテナ車 コラ1形 コンテナ車 コラ1形 コンテナ車

チラ1形/コラ1形コンテナ車は、たから号で成功したコンテナ輸送を 支線区に拡大するために、昭和37年(1962年)に55両が製作されました。
輸送需要の少ない所に送り込む事を想定し、5tコンテナ3個積とし、荷重19tの2軸車となりました。
当初は汐留・隅田川を拠点に、チキ5500形や一般貨物の編成に組み込まれ 本線発支線行きの運用で活躍し、そこでコンテナの需要が育つと今度は九州の地を耕し、最後は北海道で活躍しています。

弱点は、積荷のバランスが悪いと走行安定性が極端に悪くなる事で、片側に積コン もう片側に空コンとかの積み方は厳禁です。
デビューした当時は3個積か空車以外ダメとか、コンテナの積付に関して色々厳しい決まりがあったようですが、晩年の北海道では絵のような2個積が普通に見られたので、途中で規定が改正されたのかもしれません。

長い事活躍した本車ですが、国鉄末期には鉄道貨物の拠点間輸送方式への変革で、支線の貨物取扱駅が軒並み廃止されたため、昭和58年(1983年)に形式消滅しました。

コキ10000形 コンテナ車

コキ10000形 コンテナ車+旧一種コンテナ 公式側

コキ10000形 コンテナ車+12ftコンテナ 公式側コキ10000形 18000番代 コンテナ車 寒地形+12ftコンテナ 公式側コキ10000形 コンテナ車+12ftコンテナ 非公式側

コキ10000系は最高速度100km/hの高速貨車として昭和41年(1966年)に登場しました。
電磁ブレーキ、自動高さ調整機能付きの空気バネ台車、空気管付き密着自動連結器等を採用し、ワキ10000形、レサ10000系と共に10000系高速貨車を構成します。
車体台枠は 従来のコキ5500形より軽量化され、この設計はコキ5500形7000番代にフィードバックされています。
手ブレーキの連動は、従来の方式では高速走行時にクサリが踊るので、傘歯車を用いたロッドによる連動となっています。

コキ10000形は大きく分けて基本の暖地形と、北海道運用用の18000番代寒地形があります。外見は あまり変わりません。
昭和49年(1974年)から 12ft5tコンテナ4個積に改造されました。

チキ5200形 長物車

チキ5200形 長物車 チキチキ 25mレール積

コキ50000系はコンテナ需要の拡大を信じて昭和49年(1974年)まで増備が続きましたが、ちょうどそのタイミングで貨物輸送需要が急減してしまいました。
特急用ながらもコキ50000系みたいに10tコンテナも積めず 電磁ブレーキの整備も面倒なコキ10000系は、使いにくい存在となり余剰化しました。
ちょうどその頃、レール輸送に使用していたチキ1500形等の長物車が老朽化していた事もあり、コキ10000形を長物車に改造して置き換える事になりました。
こうして誕生したのが チキ5200形長物車です。

コキ5500形がチキ5500形2代目に改造されたのは上に書きましたが、こちらの改造は大掛かりです。
まず、コキ10000形の車体の両端と中央をカットして 全長をチキ1500形等と同じ13600mmとしました。
戦後の汎用長物車の主流は14700mmの全長でしたが、2車跨りで25m定尺レールを輸送する専用車なので この長さで充分でした。
また、下のコキフ50000形 51000番代の項で説明するように、ちょうどコキフ50000形の空気バネ台車化が行われていた時期であり、TR203台車をそちらに譲って、TR223台車に交換しました。
なのでブレーキシリンダーは車体装備になりました。手ブレーキも側ブレーキ化しています。
ブレーキ制御装置は、電磁ブレーキを撤去したうえで種車のものを活かしました。

チキ5200形は、昭和54年(1979年)から188両も改造され、現在もJR旅客会社でレール輸送に活躍しています。
なお、TR223台車は今でも原型のままで、JR化後にコキ50000形で行われた折損対策台車枠にはなっていません。
また、困った事に この車両はC制御弁という10000系貨車用の高級骨董特殊工芸品を今だに使っており、無駄にメンテナンスコストの高い車両となっています。

コキ19000形 コンテナ車

コキ19000形 コンテナ車

コキ19000形は20ft10tコンテナを輸送すべく、昭和44年(1969年)に10両製作されました。
コキ10000形に似ていますが、20ft10tコンテナを5t緊締装置をまたぐ形で積むため、車高を90mm下げています。
また、検修の苦労を少しでも改善するため、ブレーキシリンダーを台車から車体へ移設しています。
コキ19000形の10両は 半分試作のような存在で、20ft用緊締装置の構造やブレーキ装置の取りまわしにバリエーションがあります。
うまくいけば コキ10000系の増備車に生かす予定だったのかもしれませんが、コキ50000系の開発の目処が付いたため、量産はされませんでした。

コキ19000形を特徴づける20ft用緊締装置は2タイプあり、19002〜19005が着脱式隅金具サイドロック式緊締装置を装備し、その他は着脱式隅金具ツイストロック式緊締装置を装備します。
着脱式なので20ft10tコンテナの他に、40ft20tコンテナにも対応し、一部車両は30ft15tコンテナにも対応しています。
これら緊締装置は、必要な時にピンでセットする構造で、使わない時は台枠内の支持金具格納台に格納しておきます。

絵はツイストロック式緊締装置を備えたタイプ。

コキ10000形 11000番代 コンテナ車

コキ10000形 11000番代 コンテナ車

コキ19000形は異端車ながら一定の需要がありました。
しかし事故で3両が廃車となってしまったため、昭和52年(1977年)に 穴埋めとしてコキ10000形から4両が20ft10tコンテナ用に改造されました。
これがコキ10000形11000番代で、改造は20ft10tコンテナ専用としたため軽微なもので、コキ5500形8900番代と同じ構成となっています。
晩年は車番はそのままで、5tコンテナ4個積に再改造されました。

コキフ10000形 コンテナ緩急車

コキフ10000形 コンテナ緩急車+旧一種コンテナ 公式側

コキフ10000形 コンテナ緩急車(電気連結器装備)+12ftコンテナ 公式側 コキフ10000形 10500番代 コンテナ緩急車 寒地形+12ftコンテナ 非公式側 コキフ10000形 コンテナ緩急車+12ftコンテナ 非公式側

コキフ10000形は、コキ10000系の緩急車です。
製造時期や耐寒装備(10500番代)等で 形態にバラエティーがあります。
一部車両は瀬野〜八本松間の急勾配 いわゆるセノハチの補助機関車走行解放用の電気連結器を装備しています。
コキ10000系はJR化後も残りましたが、電磁ブレーキの表示器が室内に備わっていて ブレーキ試験の際に使うので、コキフ50000形のような車掌室撤去はされませんでした。

コキフ10000形 10900番代 測定車(コンテナ緩急車)

コキフ10000形 10900番代 測定車(コンテナ緩急車)

コキフ10900は、JR貨物の車両性能測定車として昭和62年(1987年)に改造されました。
国鉄時代に存在した職用客車等は 旅客会社に引き継がれましたが、当時は新形機関車や貨車が続々と開発されていたので、貨物会社で独自に用意したものです。

構造は見ての通りコキフ50000形の車掌室を2個改造してコンテナハウス化したものを、ボルトで台枠に固定しています。脇には仮設の発電機も。
従来の車掌室には連絡用ドアを付けました。当時、車掌室は現に使われていませんでしたから、測定員の休息室にでも利用したのでしょう。
手間は掛りますが、通常は緊締装置を付けてコキフ代用とし、必要時に測定室を載せたようです。
のちに測定用コンテナが登場すると、静かに姿を消しました。

コキフ50000形 59000番代 コンテナ緩急車

コキフ50000形 59000番代 コンテナ緩急車

コキフ50000形59000番代は、コキ50000系の緩急車の乗り心地を改善するために、余剰の生じたコキフ10000形をダウングレード改造したものです。
昭和54年(1979年)に14両が改造され、外見はそのままですが塗装はコキ50000系に合わせました。

コム1形 コンテナ車

コム1形 コンテナ車コム1形 コンテナ車

コム1形コンテナ車は、北海道域内の支線区にコンテナを行き渡らせるために、昭和43年(1968年)にトム50000形を改造して40両が生れました。
種車となったトム50000形は1段リンク式の走り装置のもので、そこは手を加えなかったため65km/h制限の黄帯車で、北海道封じ込めの道外禁止車となりました。
塗装は黒が基本ですが、茶色(赤3号)の物もいました。
この車は5tコンテナ1〜2個積で、見てのように3つの緊締装置は 旧一種5tコンテナを避けるギリギリの位置に設置されています。
これでは後年の12ftコンテナは積載できませんが、その問題よりも、種車が古い車なので昭和52年(1977年)までに老朽廃車されています。

コキ1000形 コンテナ車

コキ1000形 コンテナ車コキ1000形 コンテナ車+マトソン型海上コンテナコキ1000形 コンテナ車+シーランド型海上コンテナ

1960年代初頭に全世界に広まった海上コンテナ輸送ですが、日本でも昭和42年(1967年)に北米西岸航路で始められました。
このための港湾施設の改良等は 国家プロジェクトで官民挙げて取り組んだのですが、国鉄でも当然、協同一貫輸送を実現すべく行動し、海上コンテナ用の貨車を開発しました。
そして生まれたのがコキ1000形コンテナ車で、昭和43年(1968年)から70両が製作されました。
この車両は、何といっても連結器の緩衝装置に特徴があります。
当時、海上コンテナは国鉄コンテナより妻面の構造が弱く、突放入換の衝撃に耐えられないと考えられており、このため車体全長にわたる特大の油圧式緩衝器を装備しました。

また、当時あった各種規格のコンテナが積載できるように、低床構造とし、
移動式コンテナ支持梁に 高さ8ft、長さ20ft、30ft、40ftのISO規格コンテナ及び国鉄10tコンテナを、
台枠にボルト止めしたコンテナ支持金具に 高さ8ft6.5in、長さ24ftのマトソン型、長さ35ftのシーランド型、高さ8ft6in長さ40ftのISO規格コンテナを積載します。荷重は41tです。

コンテナに対して妙に車長が長いのは、コンテナを積載したままの荷役を考慮したもので、台枠の上は歩けるように鋼板張りになっています。
つまり、当時の鉄道での海上コンテナの輸送は、コンテナ埠頭で貨車に積んだコンテナが有蓋車的な運用をされて、着駅で貨車にコンテナを載せたまま荷降ろしし、地元の一般トラックに積み替える考え方です。
当時はコンテナ埠頭の数も限られ、道路も貧弱で、民間の大型トラックなど普及していなかったので、需要はありました。

国鉄の海上コンテナ輸送は当初は順調と思われましたが、地方の港湾設備の整備の進展や 国鉄の輸送環境の悪化により、昭和50年頃から急速に減少し、一旦消滅しました。
鉄道の海上コンテナ輸送が再開されたのは JRになってから しばらくしての事ですが、当時と若干意味合いが違い、
現代は トラックや沿岸航路よりも効率的な物流ができる場合に 運んでいるという感じです。

絵は左から国鉄10tコンテナ、マトソン型コンテナ、シーランド型コンテナ積です。
※マトソン型、シーランド型コンテナについての解説は積荷の絵その2を参照して下さい。

コキ50000形 コンテナ車

コキ50000形 コンテナ車 空車Aコキ50000形 コンテナ車 空車B

コキ50000形 コンテナ車 積車Aコキ50000形 コンテナ車 積車B

コキ50000形 コンテナ車 JR貨物 積車Aコキ50000形 コンテナ車 JR貨物 積車B

コキ50000形コンテナ車は、昭和44年(1969年)から始まったフレートライナー(コンテナ運用を通運に開放し、鉄道とトラックとの協同一貫輸送を実現した。)の増発用として昭和46年(1971年)に登場しました。
フレートライナーでは20ftコンテナの利用が増えたため、これを3個積みできるように車体を伸ばし、また、T11形標準パレット(1100mm×1100mm)を6枚収納できる C20形式12ftコンテナを新規開発し、これを ちょうど5個積めるようにしました。
緊締方式の異なる5tコンテナと10tコンテナを自由に混載するため、緊締装置は格納・セットが簡単にできるようになっています。
走行性能面では 急行旅客列車と平行ダイヤを組むべく、コイルバネ式ながらも高速走行が可能なTR223台車を新規に開発し、ブレーキ装置に 12系客車用のKU弁と応荷重式ブレーキ装置を組み合わせて95km/h走行を可能としました。
以来コンテナ車の主力として君臨していましたが、JR移行後に台車枠の亀裂事故が多発したため 台車を強化形に履き換えています。
コキ50000形は現役期間が長いので、積荷のコンテナは時代とともに変化しております。

コキ50000形 58000番代 コンテナ車

コキ50000形 58000番代 コンテナ車 積車A

コキ50000形 58000番代は、国鉄末期の貨物列車緩急車連結廃止で邪魔になったコキフの車掌室を撤去したもののうち、空気バネ台車を履くコキフ50000形 51000番代を改造したものです。
TR223台車の14t軸に対して TR203台車は12t軸を使用しているため、積載数は5t、10tコンテナ共に1個減となってしまいました。
改造されたものの 空気バネ台車は検修が面倒で、運用上も 少ししか積めなくて 使い勝手が悪い貨車なので 早期に廃車されています。

コキ50000形 250000番代 コンテナ車

コキ50000形 250000番代 コンテナ車 積車Aコキ50000形250000番代 コンテナ車 積車B

コキ50000系 250000番代は、コンテナ車24両編成 1200t列車や、コンテナ車19両編成 1000t100km/h列車を実現すべくコキ50000系のブレーキ装置の感度を高めたのもで、列車国鉄末期の昭和60年(1985年)に改造により生まれました。
当初は普通のコキ50000系と見分けがつきませんでしたが、JR移行後にライトグリーンに塗装変更しています。

コキ50000形 350000番代 コンテナ車

コキ50000形 350000番代 コンテナ車 積車Aコキ50000形350000番代 コンテナ車 積車B

コキ50000形 350000番代は、コンテナ車20両編成 1000t110km/h列車を実現すべく コキ100系開発までの繋ぎとして、JR発足直後の昭和63年(1988年)に45両が改造により生まれました。
改造内容はコキ50000形に電磁ブレーキを追加したのですが、110km/h走行は車体や台車の設計的に相当無理があり、あちこちガタがきて検修から嫌われ 100系が揃うと登場から数年にして地域内の小運転用に追いやられました。
250000番代の100km/h走行では問題にならなかったのに、高速域になると わずか10km/hの差で振動が段違いになるようです。

コキフ50000形 コンテナ緩急車

コキフ50000形 コンテナ緩急車 空車Aコキフ50000形 コンテナ緩急車 空車B

コキフ50000形 コンテナ緩急車 積車Aコキフ50000形 コンテナ緩急車 積車B

コキフ50000形は、昭和46年(1971年)から製作の コキ50000系の緩急車です。
コキフ10000形と違い、コイルバネ台車なので高速走行時の乗り心地は劣悪で、のちに大半が51000番代に改造されています。

コキ50000形 コンテナ車と S90形 車掌室コンテナ

コキ50000形 コンテナ車と S90形 車掌室コンテナ

S90形 車掌室コンテナは、昭和47年(1972年)に試作されたコンテナハウスです。
この車掌室コンテナが実用化できれば 緩急車を連結する必要が無くなり、検修も運用も色々無駄が はぶけそうです。
基本的にはコキフ50000形の車掌室をコンテナ化したもので、尾灯や暖房用電源のためにディーゼル発電機を積みました。トイレは携帯式簡易水洗便器を装備してます。
積載位置は コキ車の手ブレーキデッキ側に限定され、非常ブレーキ弁を動作させるために 貨車末端部のブレーキホースに ウネウネとホースを接続します。

また、S90形車掌室コンテナには、当時問題となったコキフ50000形の乗り心地を改善する研究の意味合いもありました。
つまり、従来のコキフの車掌室は貨車台枠にボルト締めで固定しており、空気バネの10000系では問題とならなかった車体の振動が、コキフ50000ではダイレクトに伝わってしまうのです。
そこで、S90形では振動対策として 脚部に緩衝バネを仕込んで効果を確認しました。
結果的に、一定の乗り心地改善はしたようですが、本格的な対策としては、下記の空気バネ台車履き替えが行われることになりました。

S90形車掌室コンテナは 試験終了後、駅構内の詰所として余生を過ごしました。

コキフ50000形 51000番代 コンテナ緩急車

コキフ50000形 51000番代 コンテナ緩急車 積車Aコキフ50000形 51000番代 コンテナ緩急車 空車B

コキフ50000形 51000番代は、車掌室の乗り心地を抜本的に改善すべくワキ10000形、ワキ8000形、ワキ50000形及びチキ5200形から 空気バネのTR203台車を譲り受けて履き換えたものです。
どうやら、コキフ50000の乗り心地の悪さは 新製してから間もない頃に表面化したようで、バネの設定を変えたり 色々しましたが うまくいかなかったようです。
改造後は、TR223台車の14t軸に対して TR203台車は12t軸を使用しているため、積載数は5t、10tコンテナ共に1個減となってしまいましたが、乗務環境はだいぶ改善されました。
しかし この改造があだとなり、コキ50000形 58000番代に再改造後は 早期に廃車されてしまっています。

コキ9300形 コンテナ車

コキ9300形 コンテナ車 非公式側 空車

コキ9300形は、国際海上コンテナ輸送の発展に備えた61t積みコンテナ車の試作車として計画され、ついでにコンテナ自動緊締装置の試験も兼ねて、昭和49年(1974年)に1両製作されたものです。
コキ9300形は 将来のコキ車を模索するための完全な試作車で、予算の少ない中 複数の試験要素を同時に盛り込んでいます。
設計はコキ50000系がベースで、ブレーキ装置も同じです。この車両そのものは実用化を考慮しておらず、軍艦で言えば試験艦・実験艦に相当します。

国際海上コンテナ輸送用としては コキ1000形が活躍していましたが、海上コン輸送を拡大するためには 貨物ターミナルの整備と共に 車体の大きさを20m級にして20ft ISO規格海上コンテナ3個積みとする事が求められました。
20ft海上コンテナ(20.32t)×3=60.96tとなると、従来の2軸台車では不可能なので高速3軸台車 TR902形を試作して試験しました。最高速度は95km/hです。
この台車はコキ50000系のTR223形台車をベースとしていますが、コキ9300形は 8ft6inの背高海上コンテナに対応して 床面高さを従来より80mm低くしているので、その辺を考慮しています。
また 試作台車なので 色々装備を変えて試せるようになっていました。
結局は 3軸台車としては試験に留まりましたが 高速台車の試験としては無駄には終わらず、その構造がJR化後のコキ100系用FT1台車に生かされたと推測されます。

コキ9300形は大荷重なので 連結器緩衝器も容量の大きいものが必要とされ、大容量シリコーン緩衝器の試験にも供されました。
連結器自体は密着式自動連結器を採用していますが、これは電気連結器の取付を考慮したためかもしれません。


コンテナ自動緊締装置は、コンテナに見合った緊締装置のセット(設廃)と、固定(緊解)を 人の手によらず遠隔操作で行えるようにし、合わせて積付確認を行うものとして考えられました。
さらに、一括制御式コンテナ緊締装置の別名もあるように、30両編成のコンテナ車を まとめて制御する事が求められました。
これは、ちょうど このころ考えられていたフレートターミナル情報システム(FIS) の一部を構成する コンテナ荷役用橋形クレーンの自動化のために必要な要素とされたものです。

コンテナの需要は伸び続けるはずだ。 多量のコンテナを捌くにはコンテナターミナルを自動化する必要がある。 荷役の自動化にはフォークリフトは適さず、自動制御化した橋形クレーンがベスト。 人が乗っていない 勝手に動く橋形クレーンの下で 緊締装置の取り扱いや積み付け検査をやるのは危ない。・・・というより、なるべく要員を減らしたい。じゃあ これも自動化しよう。
といふ訳です。

緊締装置の自動化は、従来の5tコンテナ用緊締装置は構造上難しいので、すべて海上コンテナと同じツイスト式緊締装置とする事が考えられましたが、コキ9300形は試作車なので 海上コンテナにのみ対応する事にしました。
積載パターンは20ft×3か、30ft×2、30ft×1+20ft×1、40ft×1+20ft×1です。

仕組みとしては、緊締装置の上下・ツイストロック・積空確認の各動作は空気シリンダを用い、動作の確認は 電気的に非接触リードスイッチによります。
制御は、地上ないし緩急車に装備の制御盤で 編成を丸ごと制御する方法としましたが、コキ9300形は1両しかない試作車なので 自車用の簡易制御盤が車側にあります。

実際の作業の流れは、
1.30両編成各車の向き、コンテナ積載状況をデータで把握する。
2.降ろすコンテナの緊締装置を解錠する。
3.新たに積むコンテナの積載パターンに従って 緊締装置を上昇させる。
4.コンテナが載ったらツイストをロックする。うまく載ったか否かは、コンテナ1個の対角にあるリミットスイッチと コンテナ中央に位置する積空確認用シリンダによって 回路が構成されるかどうかで確認する。
という感じで、この制御・確認のため 83芯の引き通し線を通しています。
ちなみに、現行のコキ100系では9芯(使用5本)の線を引き通していますが、貨車というのは無人・無監視なうえ 旅客車より遥かに振動が大きく 端子折損の原因となって、実は その予防だけでも大変です。
ついでに、コキ9300に装備された緊締装置関係主要機器を ざっと書くと、緊締装置上下用空気シリンダ9組、ツイスト用空気シリンダ9個、積空確認用空気シリンダ3ないし5個、それら各機器動作確認用に非接触リードスイッチ21〜23個、積付確認用リミットスイッチ9個・・・ってな感じです。
システムはアナログで、鉄道模型で例えるなら 昔のレイアウトのキャブコントロール程度の構成です。
しかし多数の機器のメンテナンスを考えると、とても現実的といえる代物ではありませんでした。

ところで、このシステムでは積付確認と言っても コンテナがちゃんと載っているかどうかの確認だけであり、コンテナ自体の不良や開戸のロック状況の確認を まったく考慮していません。どうするつもりだったのでしょうか?

もちろん、こんなシステムの実用化は試作段階から絵空事と分かっていて 取り合えずやってみただけのようなので、コキ9300形は走行試験の方に徹していた事でしょう。

コキ9300形 コンテナ車 公式側 積車


↑の公式側の絵は一見実用テスト中の風景に見えますが、実際のコンテナ積載テストでは20ftコンテナに砂袋でも載せて行ったでしょうし、最大積載は20ft海コン×3の60.96t積みです。
しかし、20ftコンテナだけでは 絵としてつまらないので、40ft(30.48t)と20ftの組み合わせで描きました。

チキ80000形 生石灰輸送用 長物車

チキ80000形 生石灰輸送用 長物車 吉澤石灰 公式側チキ80000形 生石灰輸送用 長物車 奥多摩 非公式側 生石灰輸送用 特殊容器 公式側生石灰輸送用 特殊容器 非公式側

日本鋼管京浜製鉄所は昭和51年(1976年)に人口島の扇島に移転しましたが、それまでホキ車で鉄道輸送していた副原料の生石灰は、コンテナ化のうえ 扇島へのアクセストンネル入口の水江町からトレーラーで輸送する事にしました。
そのコンテナ輸送用に用意されたのがチキ80000形で、吉澤石灰工業(33両+コンテナ49個)と奥多摩工業(11両+コンテナ21個)の私有貨車です。
大形のコンテナを輸送したいのなら、ちょうどコキ1000形が余っているのでそれを転用すればよさそうですが、ユーザーが自前で貨車を用意すると言うのなら、国鉄としては何も文句はありません。

輸送用コンテナは特殊容器とよばれ、荷重34t 総重量40tです。
コンテナ上面のハッチから積み込み、水江町に専用の橋型クレーンを建設(それまでは暫定的に浜川崎で荷役。)して ここで貨車からコンテナを降ろし、製鉄所構内でトレーラーごと傾けて、妻側から荷を排出する構造です。
コンテナの固定方法は海上コンテナと同じツイストロック方式で、一応幅は海上コンテナと同じですが、長さは31.5ft相当と中途半端です。
JRの31ftコンテナと違って30ftの位置には隅金具が無いので 海上コンテナ用の荷役機械は使えませんね。

チキ80000形はこの特殊容器に特化した構造で、汎用コンテナ(国鉄コンテナ、海上コンテナ、フレキシバンコンテナ。)は積載できないため、形式種別は必然的にコンテナ車ではなく長物車となります。
貨車上にはコンテナを簡単に定位置に積めるように、大形の案内枠が備わっています。

チキ80000形は昭和63年(1988年)まで活躍しました。

コンテナ車代用無蓋車

トラ55000形 コンテナ車代用無蓋車 公式側トキ25000形 コンテナ車代用無蓋車

通常、臨海地区などで支線の末端部の駅にコンテナを運ぶ場合、コンテナ車をそのまま乗り入れたのでは入換上の効率が悪いです。
長旅を終えたコンテナ列車の終着駅は ターミナル駅までで、そこからのコンテナ輸送はトラックが担います。

しかし、近隣にコンテナ基地が点在していて、しかも中途半端に輸送需要がある場所では、線区内用のコンテナ車を使う場合があります。
コンテナ車と言っても、コキ車を用意するほど輸送需要は無いですし、急曲線があったりしますので無蓋車を改造して使います。

絵は、そんなヤツ2例を示します。
左のトラ55000形改造車は新潟地区の東三条〜沼垂間。アメリカンなスタイルのトキ250000形改造車は名古屋臨海鉄道の昭和町〜南港間のもの。
コンテナ緊締装置は、トラは廃車発生品、トキはトラックの物と思われます。

なお、これら代用コンテナ車とは別件で、昭和40年代中盤にコンテナ兼用無蓋車が検討されていました。
これは 正規のコンテナ車の増勢だけでは賄えないコンテナ輸送需要の拡大に対処して、使用率が低下してきた無蓋車を海上コンテナ輸送に充てるもので、既にあった輸出用海上コンテナ輸送用に改造された無蓋車と同様のものを 増備する計画だったようです。

※トラ55000形及びトキ25000形についての解説は貨車の絵 その2を参照して下さい。


貨車の絵 その1は こちら  貨車の絵 その2は こちら  貨車の絵 その3は こちら  貨車の絵 その4は こちら  貨車の絵 その6は こちら  貨車の絵 その7は こちら  貨車の絵 その8は こちら  貨車の絵 その9は こちら  貨車の絵 その10は こちら  貨車の絵 その11は こちら  貨車の絵 その12は こちら  貨車の絵 その13は こちら  貨車の絵 その14は こちら  貨車の絵 その15は こちら  貨車の絵 その16は こちら  積荷の絵その1は こちら  積荷の絵その2は こちら  蒸気機関車の絵は こちら  ディーゼル機関車の絵は こちら  電気機関車の絵は こちら  小形鉄道車両の絵 その1は こちら  小形鉄道車両の絵 その2は こちら

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